第19話

「マジ?ちょっと裕也の部屋行ってくるわ。」




「えー?勉強しないの?」




「約束してた漫画借りて来るだけだし。」




祐希は複雑そうな顔をしていたけど、樋山君はシャーペンを置いて、そのまま立ち上がった。




体中の血管が膨張したんぢゃないかってぐらい全身がドクドクと脈打ってる。




心臓の鼓動が速くなりすぎてこのまま飛んで行きそう。




鼓動の音が大きく脳内に鳴り響いてみんなにまで聴こえているかも知れない。って錯覚までしそうになる。




そんな私に気付くこともなく、祐希も篠田君もノートにペンを走らせてる。




祐希のお兄ちゃんの"裕也"さんが私の会いたかった"裕也"さんだとは限らないのに。




期待、願望、希望。




その感情で心の中が支配されていく。




"里恵子の運命の人!"




祐希が無邪気に笑って言ったあの言葉が頭に鳴り響く。




その無邪気な笑顔が裕也さんとシンクロする。




確証はない。




でも、気になったら止まらない。

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