第9話

「いい加減諦めて合コンでも行く?」




加奈の声で我に返る。



加奈と話していたんだった。



どうにも夏休みと言うフレーズはあの日の夜を思い出す。




「合コンか……」




諦めて新しい出会いを探した方がいいのかな?



もう望みなんて全くないもんね。




「何が合コンだよ」




そう言われて急に触れられた大きな男の手。



肩に触れられただけなのに、胸が高鳴る雅史の手。



不意打ちでこんなことをするなんて卑怯だ。



不覚にもドキっとしてしまった。




「ま、雅史…?友達と話してたんじゃないの?」




さっきまで友達と話し込んでいたくせに、いきなり私のとこに来るから驚いた。




「別に。合コンなんて行くなよって言いたかっただけ」




雅史はフィっと顔を背けてまた友達のもとに戻って行った。




雅史は媚薬でもあり毒でもある。




私を絶頂に昇らせたり、絶望に落とし込んだり忙しい男。




そんな男に心底惚れ込んでる私はバカだ。

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