第3話
雅史の吐息が耳にかかる。
ベッドがギシっと音をたてた。
その音を聞くだけで期待と欲望に包み込まれていく。
そっと撫でられた頬が熱を持ったかのように徐々に熱くなった。
速まる鼓動が腹立たしい。
雅史に起きてるってバレるんじゃないかって不安になる。
でも、いつも雅史は私が寝たふりをしているとは夢にも思わずに指を這わせてくる。
寝てるわけないじゃん。
こんなことをされて気づかないわけがない。
そっと触れる指がもどかしい。
遠慮がちに触れる唇がもどかしい。
優しくなんかしなくていいの。
もっと激しく
もっと夢中に
もっと私を求めて欲しい。
もっと雅史を私に刻みつけてよ。
雅史は卑怯だ。
了承も得ずに勝手にこんなことを毎晩のように繰り広げて。
起きてるときなんて手すら触れてこないくせに。
私なんか興味もないくせに。
“彼女はいらない”なんて言うくせに。
愛の言葉なんて囁くことなんてないくせに。
「亜衣……」
私の名前は切なげに呼ぶ。
いつもそう。
その掠れた声のせいで、雅史が自分のものになったような錯覚に陥るんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます