第39話

きょうちゃん、これ」


「うん。気が向いたら挿しに来れば?」


「来ればって……」


「来たら案外すんなりと嫁の貰い手が見つかるかも知れないよ」




いったい何を考えているんだか、きょうちゃんは私に背を向けるとヒラヒラと手を振った。



そのまま目を見開いた私を置いて振り返ることなく扉の向こうに消えていく。



ベルが鳴って風が舞い、ぽかーんとしている間に電車が走り去る。



ポツンとホームに取り残された私と新居の鍵。



何これ?偶然?思い付き?


それとも渡す為にわざと落とした?



じゃあ、まさかこれって合鍵とか……?


だとしたら嫁の貰い手ってきょうちゃんが私を?



いやいや、それはない。


いくら何でもそんなはずは。


でも……。

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