片道切符

第37話

それからモヤモヤしたまま数日が過ぎ。


きょうちゃんの旅立つ日があっという間に来てしまった。



あれから何度か電話で喋ったけど、出てきた話題は引っ越しに関するものばかりで肝心な話は聞けず終い。



ハッキリと振られるのが嫌で、すっかり怖気おじけづいちゃってる。



それでも後悔だけはしたくなくて駅まできょうちゃんを見送りに来た。


これで会うのも最後になるかも知れないな、と思いながら。




「よっ」


「あぁ。偶然だね」



行くとも告げずにふらりと会いに行ったが、きょうちゃんは私と顔を合わせても特に驚きはしなかった。



目が合うなりいかにも偶々たまたま会ったかのような口振りで話し掛けてきて。



偶然じゃないことくらい何時の電車に乗るか聞いた時点で分かってたくせに。


本当に息でもするように嘘ばかり吐く唇だ。




だけど、もう、それすらも愛しく思う。


叶うなら行かないで欲しい。


このまま傍に居て欲しいと心の中でせつに願う。



「元気でね」


「そっちこそ」



しかし、状況は変わらず。


別れの定型文みたいな挨拶を交わしながら改札を抜け、ホームに向かう。



最後だと言うのに、いつもより距離を開けちゃって。今日のきょうちゃんは何だかよそよそしい。



俯いたまま、全然、喋らないし。

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