第33話

今がベストな状態だけに変わるのが不安。


今まで友達として過ごしてきた私達が恋人になったら、一体どうなるんだろう…?



少なからず友達だから許せたことも彼氏だと許せなくなって。


友達だからしなかったことは彼氏とならしてみたくなって。


友達だと求めなかったことも彼氏だと求めたくなってしまいそう。



逆も然り。



恋人と友達じゃいだいてる気持ちまで変わってしまいそうな気もする。


そうなったら何だか関係まで歪みそうで怖い。





「どうしたの?深刻な顔をして」


「んー、考えごと?」


「疑問形かよ」


「自分でもよく分からないの」


「ってことは大した悩みじゃないな」


「決めつけないでよ」




ケラケラ笑うきょうちゃんに苦笑いを返す。


いっそ、そういうことにしてしまおうか。気にはなるけど、今日じゃなく別の日に聞けばいいかなって。


もう直ぐきょうちゃんは遠い場所に行ってしまうのに。




「あ、分かった。祖母ばあちゃんに言われたことを引き攣ってるんだろ」


「まぁ、そんなところ」


「確かにあやは飲み過ぎだよなぁ。いっつも潰れるまで飲んでるし」


「それは…。きょうちゃんと居る時だけよ」


「そりゃそうなるように仕向けたんだから当たり前だわ」


「仕向けたの…?」


「そうだよ。ここ3年、必死だった」




サラリと意味深な発言をしてきょうちゃんは私を連れて街中を歩いていく。


仕向けたって何それ?

必死だったって何が?



意図が分からず前を歩く背中を複雑な思いを抱えながら見つめる。

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