第32話

知らないでしょう。


そうやって甘やかされる度に私が依存していってることなんて。


その口から、いつか愛情が囁かれる日が来るのを待っていることなんて、京ちゃんは知らない。


言ってないんだもん。


知るはずがない。




「ねぇ、きょうちゃん。皆、私達の関係が恋人だと思ってたね」


「そりゃ、あれだけ言い回れば大抵の人はそう認識するでしょ」


「私達の妹とお母さんもそう思ってるらしいよ?」


「そこは尚更思うんじゃない?頻繁に一緒に居て、2人で旅行まで行ってるのを知っているんだから」


「いいの?私が京ちゃんの彼女だと思われても」


「いいの、いいの。否定した方がややこしいじゃん。じゃあ、どういう関係?とか聞かれたら面倒くさいし」


「そうだけど」



確かにそうだけど。


後々、否定するのは面倒じゃないんだろうか。



そもそも私が聞きたいのはそこじゃない。


私はきょうちゃんの彼女なのか、友達なのか、本当はどっちなのかってことだ。



そこら辺ハッキリさせたい。


どちらなのかによって未来が変わると思うから。




でも、いざ聞くとなると聞き辛いな…。


違うって否定されたら。

そうだよって肯定されたら。


私、きょうちゃんにどんな言葉を返せばいいんだろう。

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