第31話

どうすれば、このままで居れるのかな。


今は隣に居るこの男の結婚もいつか祝うことになるかも知れないと思うと不安だ。


祝いの場でこんなこと考えるのなんて不純だと思うのに止まらない。



「わ、危な……」


「あ、おい」


「ごめん。急に酔いが回ってきた」




考えてたら一気に酔いが回ってきた。


堪らずふらついた私の身体をきょうちゃんが支えてくれる。


それが心地良いと思っているんだから結構重症。


すっかり慣れ親しんでしまった腕の中、妙な安心感に包まれる。




あや〜?大丈夫?」


「ごめん。無理っぽい。連れて帰るわ」


「おー、またな」



駆け寄ってきたシバセンと皆に別れを告げ、きょうちゃんは私の手を掴むと店から出た。



そのまま当たり前のようにタクシー乗り場の方へ歩いていく。



普通に手なんか繋いじゃってさ。


嬉しい反面、残酷で仕方がない。



この力強さも匂いも声も自分が1番、誰よりも絶対にきょうちゃんのことをよく知っていると言い切れるのに、きょうちゃんは私の恋人じゃない。


この時間だってそのうち色褪せて消えてしまう。


それでも傍にある温もりは確かな熱を持っていて、いつもと変わらない。


変わらないこそ、嫌になるくらい無性に胸が疼く。

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