第23話

そりゃ嬉しい。友達が幸せそうで。


嬉しいけど、焦る。




「どうしよう…。来年の今頃は丸坊主になって滝修行にいそしんでいるかも知れない」


「心配しなくてもあやに寺勤めは無理だよ。3日でクビになる」


「いや、それもそれでどうなの?」


「まぁまぁ。そんなに不安ならシバセンから幸せパワーでも貰ってくれば?ご利益があるかもよ」


「そうしようかな」


「そうしろ。俺も友達と話してくるし」


「うん」



促されるように背中を押され、友達のところに行くと言うきょうちゃんに手を振り、1人シバセンの元に向かう。



1番前の席で皆に囲まれていたシバセンは私に気付くと笑顔でこちらに駆け寄ってきた。



キラキラと眩しい笑顔だ。全身から幸せオーラを出しちゃって羨ましい。


左手の薬指の指輪が一際幸福感を放っている。



「おめでとう。シバセン」


「ありがと〜」


「いいなー。幸せそうで」


あやもそのうち経験するわ」


「するかなぁ……」


「するする」

 


空いていたすみの席に座り、シバセンに曖昧な笑みを返す。


いつか私もそんな顔が出来るんだろうか。


今のところ、そんな気配は全くと言っていいほどないけど。



寧ろ、きょうちゃんの引っ越す日が一刻一刻と迫ってきて憂鬱。


止まってくれればいいのに、戻ってくれればいいのに、って考えるのはそればっか。


それでも時間は無情にも真っすぐ前を向いたまま。


時計の針は振り返ってばかりの私とは違い、未来に向かって一針ずつ進んでいる。

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