第22話

「全く。そんなベロベロに酔っ払って……。また祖母ぱあちゃんに何か言われたの?」


「くっ、あの女…。今日は人の家に来るなり“もうあんたは出家して尼様になるしかないね”って言った」


「おー、手厳しいな。シバセンの結婚が余程堪えたか」

  

「孫共々、堪えまくりよ。シバセンだけは絶対に先に行くまいと信じてたのに」


「あっさり結婚しちゃったね」



ガックリと肩を落とす私の隣できょうちゃんが声もなく笑う。



あぁ、そうだよ。正にその通り。


絶対に先を越されまいと思ってた長年の友達が結婚をしてしまって、ちょっと荒れている。



新婦のシバセンは中学時代からの友達だ。


柴田しばた千里せんりで略してシバセン。


中、高と同じ学校だったきょうちゃんも彼女の事はよく知っている。



シバセンと言えば、昔から勉強が1番、恋愛なんて二の次の勤勉女子だった。


オシャレも趣味も後回しでとにかく勉強。

休みの日まで毎日勉強。

テスト前は寝ずに勉強。


それこそ根っからの真面目人間で、彼女は社会人になってからも恋愛なんて後回しでストイックに仕事に励んでいた。



合コンの誘いも飲み会の誘いも旅行の誘いも「次の日の仕事に支障があるといけないから」の一言で蹴散らして、滅多に参加はせず。  


勤勉女子から誰もが認めるスペシャル仕事人間に進化しつつあったシバセン。


きっと彼女はこのまま結婚することもなく仕事に生きるんだろうなぁ…、って仲間内の人間は全員がそう思っていた。



なのに、会社の取引先の人と恋に落ちたとかで、あっさりお嫁にいっちゃって。


照れくさそうに結婚の報告をしてきたシバセンの眩しい笑顔を思い出す。

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