第11話

「だから髪の毛。乾かせって」



お風呂から戻ってきたきょうちゃんがドライヤーを手に取り、呆れたように笑う。



反抗する気も起きず、じっとしてたら足の間に引き寄せられ、直ぐに温かい風が髪を撫でた。



指を通して、風を当てて、整えて、あたかもそうするのが当たり前のように私の髪を乾かしている。




「慣れてるね」


「そりゃ、何年も掛けて教え込まれたからね」


「誰に……?」


「さぁ…。誰だったかな」




探るようなことを聞いた私にきょうちゃんは優しい笑みを顔に描いた。



何だか笑顔がやけに穏やかだ。



妹かな?それとも元カノ?いったい、いつの?


割と最近だったり?



いつもと違う表情をするきょうちゃんに少しだけ動揺。



そんな風に焦る権利なんて私には無いけど。




「はい。終わったよ」


「……ありがとう」


「じゃ、寝よっか」




モヤモヤした気持ちが止まらないが、それでも腕を引っ張られてベッドの中へ。


お世辞にも広いとは言えないベッドの中、されるがままにすっぽりときょうちゃんの腕の中に納まる。



いいのかな……。彼女でもないのにこんなことやってて。



そう思うが、葛藤しまくっている私とは違って、きょうちゃんは当たり前のように私を抱き締めている。



きょうちゃんは、この辺あまり気にしないらしい。



することしちゃってる所為もあるんだろうけど、全くもって普通。



私はドキドキして、そしてモヤモヤもするのに。



いつも普通に抱き締めて、からかようにくすぐってきて、流れるように胸を触ってくる。

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