第10話

「生きてた?」


かろうじて」


「なら良し。俺も入ってくる」



部屋に戻り、立ち上がったきょうちゃんと入れ替わるようにベッドの前に座る。



独りぼっちになった部屋の中。テーブルの上には私が来た時にいつも使うコップ。



中には冷えた水が入っている。




「いつもそうだなぁ……」




何だか感傷的な気分になって一人寂しく呟いた。




あの日もそう。お風呂から出たら、こうやって水が用意されてた。



そして戻ってきたきょうちゃんに髪を乾かされて。ベッドに行って。じゃれ合って。



そのまま流されるように、あの日の私はきょうちゃんとヤッた。




だって大人になった私達の人生は、良い意味でも悪い意味でもバラバラに進んでいて。教室で過ごしていたあの時みたいに交わることはもう無いんだな…、と思うと何だか無性に寂しくて。




変わることなく傍にいてくれるきょうちゃんの優しさや温もりが心に染みて。だから、つい、手を出してきたきょうちゃんに身をゆだねてしまった。




何か消えない繋がりみたいなモノが欲しかったのかも知れない。



体を繋げば心も繋がる。そんな、単純な考え。



終わってしまえば、簡単に離れてしまうのに。



あの日の私はお互いが鎖で繋がれた気分だった。




だから何度も何度も出そうになった好きって言葉を喉の奥に流し込んだ。



止めもなく重い言葉が浮かんでは容赦なく消した。



どうしてそんな言葉が出てきそうになったのかさえ、あの日の私には分からなかった。



離れられなくなってしまった今なら少しは分かるけど。

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