誘う手

第8話

「もう無理」


「無理じゃない」


「無理だってば」




居酒屋から出て、帰ってきたのはきょうちゃんの家。



いかにも一人暮らしの人が好みそうな、手頃な広さの小綺麗なマンション。



1階だからすんなりと帰れて助かる。階段から落ちる心配もなし。



しかし、それでも目が回ってキツイ。足は力が入らないし、頭は真っ白。



これはもう完全に酔いが回ってる。



なのに、きょうちゃんったら容赦ようしゃがない。



早く歩けとかしまくって、引きずるように私を家の中に押し込んだ。



おまけに靴を脱ぐのに手間取てまどっている私を見て、何がそんなに面白いんだか爆笑。



楽しそう。




「ほら。ちゃんと立って」


「無茶言わないでよ…」


「だから飲み過ぎるなって言ったのに」


「そうだけど」


「しょうがないなー」




呆れた顔で笑ってきょうちゃんは私をひょいと背中におぶった。



いつものことだからか、動作が物凄く手馴れてる。

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