第6話

「物騒な」


「いや、本気で刺せって言ってるんじゃないから」


「じゃあ、何?」


「だからこう、杭を打つようにさ、目には見えない何かを心に突き刺すんだよ」


「意味がわかんない」


「なんで、わかんないかなー」




首を傾げた私にきょうちゃんは苦笑いを浮かべた。それはもう本気で呆れ返っている。



何なのよー。もう。身振り手振りで教えられたけど、意味不明。謎だ。




「もういい。きょうちゃんに相談をした私がバカだった」


「ね。ほんとバカ」

 

「あーあ。悲しい」


「拗ねるなって」




声もなく笑うきょうちゃんを横目に何杯目か分からないお酒に手を伸ばす。



いいや、もう。この際、今だけでも飲みまくって忘れてしまおう。



じゃなきゃ本当に枯れてしまいそうだし。考えれば考えるほど先は暗い気がして止まらない。



心がむなしい所為か、店に充満した焼き鳥の煙まで目にみる。

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