第14話

「誰かと思えばクゲじゃないか」


「ん?あの男、知り合いか?」


「いや。知り合いな訳じゃないんだが。最近うちの界隈でよく名を聞く男だ」


「ノンちゃんの周りと言えばヤクザ関係か」


「だな。ちまたじゃ人身売買をしてるって噂だぞ」




お兄ちゃんとノンちゃんがクゲ君についてコソコソと話し出す。


何の話か分からないけど、かなり真剣。



お兄ちゃんったらスマホまで取り出して今にもどこかへ行っちゃいそうな勢い。


戸惑ってる私の隣で「調べてみるか…」とぶつぶつ呟いてる。





「もうっ。お兄ちゃん。あの人の事はいいから」


「でもなぁ…」


「それより遊んでよ」


「んー、後で」


「ダメ。今」




構って〜。と腕を掴んで必死にお強請り。


無邪気な子供に成り切って。



それでも無視されたから、態と体を倒してお兄ちゃんを無理やり海の中へ引っ張り込んだ。




だって、せっかく海に来たんだから遊んで欲しい。



最近、全然構ってくれなくて寂しいんだから。

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