第72話

この間って……、足を止めたのなんか、ほんの一瞬だったのに。


あなた、興味がなさそうに『何やってんだ。行くぞ』とか言ってたじゃない。



そのくせ、ちゃんと気付いてただなんて。


視線を向けてたのは私ばかりじゃなかったんだと知って胸が熱くなる。



「ありがと」


「あぁ」


「付けてくれる…?」




ちょっと甘えるようにそう頼んだら、ショウは「はいはい、首輪な」とおかしそうに笑って私の手からネックレスを取った。


付けるのは俺の方じゃなかったのか、って何だかちょっと楽しそう。



その笑顔に釣られて私も笑ってしまう。



本当にまったく。


狡い男ね。


いつもいつも構ってくれないと思ったら肝心なところで甘やかしてくるんだから。



これじゃ“彼女なんか辞めたい”なんて、やっぱり思えないじゃない。



きっと永遠にずっと。


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