第60話

「……別にそこは忘れてねぇけど」



「本当に?何だかさっきから様子が変だし」



「そりゃ起き抜けに色んな話をされたら嫌でもそうなるだろ」



「えー。じゃあ、さっきまでのあれは、ただ寝ぼけてただけってこと?」



「あぁ」




何が“あぁ”だよ。



余計に話をややこしくさせてんな!と自分でも思ったけど、こればっかりは仕方がねぇ。



マジで自分が忘れてるだけって可能性だってあるし、何より否定して関係に溝が出来たら困る。



こいつと喧嘩して会わなくなると、つまんねぇ上に気まずいしな。



それこそ頭の中からそのことが離れなくてイライラして止まんねぇ。



だったら平和に解決させておきたい。




しかし、こういう時、姉貴に教え込まれた“取り敢えず一旦飲み込む”ってスキルが無差別に反応しまくってうざい。



今度、実家に帰って来たら覚えとけよ。あの元ヤン。

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