ソウルNo.486 輪廻転生します!
菊池昭仁
プロローグ
死んでから5年が経った。
魂は永久不滅であり、解脱するには「我」、自分を捨てなければならない。いわゆる「無我」の境地になることが必要だった。
生と死は常に表裏一体であり、死ぬことで新たな「生」が産まれる。
これは物理学で言うところの「エネルギー保存法則」を証明するものである。
天、人、修羅、畜生、餓鬼、地獄の六道がそれだ。
大宇宙のエネルギーは一定で不変なのである。
「ソウルNo.486、輪廻転生せよ」
死ぬと戒名や名前で呼ばれることはない。男に産まれるか女に産まれるかもわからないし、人間に産まれる保証もないからだ。だから番号で呼ばれる。
そしてあの世では前世で一番気に入った姿でいることが出来た。
16歳が良かったら16歳に、26歳が良かったら26歳にというわけである。
486番は23歳の女の姿をしていた。死んだ時は98歳の老婆だった。
死んでも見栄っ張りであった。
「はい、今度は何に生まれ変わるのでしょうか? ハリウッド女優だったりして?」
「今度は犬だ。お前はコーギー犬のオスになるのだ」
「犬ですか? コーギー犬かあ~、あの短足の?」
「不満なのか?」
「前世ではセクシー美人女優だったのでつい」
「せっかく朝ドラ女優にしてやったのに、お前は妻子持ちのイケメン俳優を誘惑し、その家庭を壊した。そしてそのイケメン俳優にも飽きて、別な男たちとチョメチョメし放題だったな?
それに年齢を誤魔化し、35歳であるにも関わらず、10歳もサバを読み、25歳だと公式プロフィールに記載していた。そしてスタッフとマネージャーを犬のように扱った。だから今度はお前が犬になるのだ。犬になってお前が迷惑を掛けた人の気持になって反省するのだ」
「はあ、わかりましたよ、まあいいや、どうせ犬の寿命は短いし、沢山の徳を積んで今度こそハリウッド女優になってみせますから」
「本当はオスの実験用モルモットだったんだが、輪廻転生選定委員会にお願いして犬にしてやったんだからありがたく思え」
「はーい」
「今度は何を学ぶつもりだ?」
「今度は私に欠けていた「思い遣り」を学ぼうと思います」
「そうか? 親犬はどうする?」
「やさしそうだからこの母犬にします。すぐにお別れですけど」
「まあ血統書付きの由緒あるコーギーになるわけだから、すぐに新しい飼主に買われることになるわけだしな?
飼主はどうする?」
「飼主はなるべく意地悪な人を選びたいと思います。
その方が修行になりますから」
「そうだな? 生きることは所詮「苦」だ」
「ああ、早く解脱したいなあ」
「解脱条件の100万回転生まであと673,287回か? まあがんばりなさい」
「はい! ではソウルNo.486、犬に生まれ変わります!」
「達者でな?」
ソウルNo.486は地上に犬として産まれて行った。
ソウルNo.486 輪廻転生します! 菊池昭仁 @landfall0810
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