20センチ

第14話




「それでな、お嬢さんは死んだワシの嫁さんの若い頃にそっくりでのぅ」


「そうなの?そんなに似てる?」


「あぁ、そっくりじゃ。特に目元がよく似とる」




卒業式まで残すところ2週間。


マンションの下の公園で見知らぬお爺さんとベンチに座り、にこやかに会話を交わす。



雲1つ無い空の下。マンションから出て直ぐ、足が痛いと言うお爺さんに遭遇し、ベンチまで手を貸すこと数分。



どうやら、お爺さんの亡くなった奥さんの若かりし頃と私の顔がそっくりらしく、さっきからお爺さんの口が動いて止まらない。



突いていた杖も地面に放り出して私の手をぎゅっと握り締め、心の底から感動している様子。



キラキラと輝く目は純粋そのもの。


強請るように“もう少しだけ話がしたい”と言われ、断ることも出来ずに頷く。



本屋に行く予定だったけど、まぁいっか。急いでないし。もう少しだけ話に付き合おう。

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