第71話

「さっちゃんは……俺の彼女だよな?」



「それは……」




彼女か……。さっきは強引に頷かされた感じだったけど、本当に智明と付き合っていいのだろうか?




私は和田君が好きだし、智明を好きになれるとも思わない。




否定してしまおうか……。




でも、さっきの嬉しそうな智明の顔を思い出すとなかなか否定の言葉を言いづらい。




「やっぱり、へなちょこな男は……ダメだよな……」




智明はそう言って目を伏せる。




へなちょこ……そう。こいつは女々しくてしつこい男だ!




危ない。智明に飲み込まれるところだった。




「そ、そりゃそうよ!彼女なんて取り消し。じゃあね」




私は智明の腕を無理やり引き剥がして玄関から飛び出した。




掴まれていた腕にまだ熱を感じながら。




この時に取り消しだなんて言わなければ、智明が豹変することもなかったのかも知れない──。

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