第36話

静まりかえる廊下は雀の鳴き声しか聞こえない。




智明がいないと朝って、こんなに静かなんだ……。




改めて実感する。




ふっと外を眺めると、早朝のせいか誰もいなかった。




まるで、この地球上に存在する人間が全て消えて、私だけが残ってしまったかのような錯覚に陥る。




少しだけ寂しくなって小さく笑みが零れた。




煩わしいと思っていた雑音も、いざ消えてみると不安を感じる。




それと一緒なんだ。




散々あいつに『煩い』だの『迎えに来なくていいから』だの、喚き散らしておいて、都合がいい話だよね。




やっぱり隣にはいて欲しいと思うなんて。

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