第34話

自分の家に帰宅して、私は直ぐに浴槽にお湯を溜めてお風呂に入った。




考え事をするにはお風呂に限る。




暖かいお湯の温もりに包まれながら智明の言葉を思い出す。




『好きじゃないなら惚れさせる』か……。



女々しい智明にしては男らしい発言だった。




“惚れさせられるもんなら惚れさせてみろ!”




って感じだけど。絶対に惚れないし。




でも……まさか智明にドキッとするとは思ってもみなかった。




真剣な顔で“紗理奈”って呼ばれたのは初めてで。




そのせいかもしれない。




いや、きっとそうだ。



じゃなきゃ、智明にときめく理由なんてない。




私にとって智明は、ただの幼なじみで兄妹みたいなものだし。




だから気のせいだ。




アイツが男に見えたのは──。

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