40

 すべて円滑に話が終わり、私と琉輝さんは叔父の家をあとにした。

 カフェで私にアイスコーヒーを浴びせるくらい激怒していた叔母が、最後は笑顔で見送ってくれるなんて。

 これまでと態度をガラリと変えた完全なる手の平返しだ。


『俺が翠々の力になる。任せろ』

『翠々にとって身内と呼べるのは叔母さんだけだろ? なんとか関係を修復出来たらいいな』


 大丈夫だと琉輝さんが言ってくれたとおりになった。

 彼がいなかったら、私は叔母から本当に縁を切られていたと思う。


「琉輝さん、今日はありがとうございました。お金は働いて返しますので」

「ごめんな。余計なことだったかもしれないけど、早く返済しておいたほうがよさそうだったし」


 隣を歩く琉輝さんがおもむろに私の手を取ってギュッと握った。


「翠々は助けて欲しくても我慢するタイプだろ? これからはなんでも俺に言えよ」


 もっと頼ってもいいのかな。彼の包容力を前にすると、溶けるくらい甘えたくなってしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る