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◇◇◇
「こちらの方はどなた? 弁護士さん?」
半月後、琉輝さんとふたりで叔父と叔母に会いに行った。
きちんとした用件がなければ会ってもらえないと思ったので、借金返済の件で話したいのだとメールで伝えておいたのだけれど、叔母は私が弁護士を伴ってやって来たと勘違いしたらしい。
玄関先で腕組みをしながら憮然とした態度を取っている。このまま家に上げてくれずに門前払いするつもりだろうか。
「違うの。弁護士さんじゃなくて」
「初めまして。鳴宮琉輝といいます」
琉輝さんが名刺入れから名刺を一枚取り出し、美しい所作で叔母に手渡した。
まるで値踏みするように視線を上下させていた叔母だったが、彼が身に着けている濃紺のスリーピーススーツが上等なブランド品であるとすぐに気づいたみたいだ。
「まぁ! スターレイルの社長さんでいらっしゃるの?」
ツンとしたまま名刺に視線を落とした叔母が驚いて大きな声を上げた。
「はい。実務を担ってるほうの関連会社ですが」
「でも、鳴宮さんってお名前……もしかして創業一族の方?」
琉輝さんが柔和な笑みをたたえてうなずくと、家柄や肩書が大好きな叔母は一瞬で表情が明るくなった。
私は逆に、叔母のこういう浅ましい部分が恥ずかしくて仕方ない。
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