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「曾祖父が飛行機好きだっただけ。とはいえ華族の家で生まれ育ったのを考えたら、異端児だと言われていろいろと反対はされただろうな」
検索をかける私を見守りつつ、琉輝さんは落ち着いた笑みを浮かべる。
「ところで、あれから叔母さんと話した?」
彼の質問に私は力なくふるふると首を横に振る。
「私から謝罪のメールを送ったら、振込先が書かれた返信は届きました。叔母はもう私と話す気はないんだと思います」
そう口にしたものの、私も本気で叔母と和解したいのかと問われたら即座にうなずけない。
今まではなんとかうまくやろうと精一杯気を使ってきたけれど、一週間前にコーヒーを掛けられたことで張りつめていた糸がプツリと切れてしまった。
「借りた留学費用は少しずつ返していきます。叔母も私が一度に払うのは無理だとわかっていると思うので。今住んでるマンションも追い出されるから新しい住み家を見つけないと……」
「そういえばカフェで、出て行くように言ってたな」
「実家を引き払ったあと、叔父の会社が所有してる単身用のマンションに住まわせてもらってるんです。もちろん家賃は払ってるんですけど」
格安にしておくから住めと言いだしたのは、実は叔母のほうなのだ。なのに今度は出て行けという命令が下った。
私と一切の縁を切ると豪語したのだから、叔母はとことん冷徹になるつもりなのだろう。
「もし住むところがなくなったら、うちに来ればいい」
「じょ、冗談ですよね?!」
「空いてる部屋はあるけど?」
テーブルに頬杖をつき、あたふたとあわてる私の様子を楽しそうに観察している琉輝さんは少し意地悪だ。
だけど、その根底には彼のやさしさや思いやりがきちんと詰まっている。
頼れる人がいる。そう思うだけで今の私は心の底から安心できた。
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