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「実は父が叔母に借金をしていたみたいなんです。私は知らなくて、父が亡くなったあとでそう聞きました」
父は今年の春に病気で急逝した。
母も私が小学生のころに病気で他界したので、それからうちは父子家庭だった。
母の両親に結婚を反対され、ふたりは駆け落ち同然で一緒になったらしい。
母が亡くなったときに父方や母方の祖父母に子育ての協力を仰ぐこともできたのに、父は一切頼らなかった。
ひとりで私を育て、大学にも行かせてくれた。
そして私が留学したがっているのを知り、なんとしてでも叶えてやろうとしたのだと思う。
でもどうしても費用が足りなくて、唯一頼ったのが自分の妹だった。
「金額はいくら?」
「留学費用とその支度のために、二百万円借りていました」
正直に私に話せば、遠慮して留学を辞めるとわかっていたから父は黙って借金をしたのだろう。
金銭にシビアな叔母は借用書にサインまでさせていて、それを見せられたのだけれど間違いなく父の筆跡だった。なので叔母の話はウソではない。
「俺が翠々の力になる。任せろ」
「いえ、琉輝さんを巻き込むだなんてそんな……」
「君のお父さんが亡くなったとき、俺はすぐに日本に戻れなかった。つらいときにそばにいられなかったことを今でも悔やんでるんだ」
彼が苦々しい表情を浮かべて私を見つめる。
本当にこの人はどこまでやさしいのだろう。
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