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「お相手のお父様が叔父のクライアントらしくて。それで叔母があわてて謝りに行って……」
「だからってカフェでコーヒーを浴びせるのはやりすきだろ」
「叔母が冷たいものしか飲まない人でよかったです」
これがアイスではなくホットコーヒーだったなら、私はヤケドしていたかもしれない。
自虐的にフッと苦笑いを浮かべると、ひどく心配そうな表情をした琉輝さんと目が合った。
「叔母はいわゆる“瞬間湯沸かし器型”で、すぐに怒りの感情が沸騰して爆発するタイプなんですよ。こうなったのは全部私のせいです」
「違うだろ。翠々は無理やり見合いをさせられたんじゃないか」
「叔母には……逆らえなくて……」
しっかりしろとばかりに琉輝さんの右手が私の左肩に触れた瞬間、張りつめていた気持ちがくじけそうになる。
「もう少しで翠々がそんな相手と結婚させられてたかと思うとゾッとする。だから逆にこうなってよかったんだ」
彼の真剣な眼差しが私を射貫いて離さない。
心から相手を思いやれる琉輝さんの包容力は出会ったころから同じで、弱っている私はそれを実感して再び涙目になった。
「それと、留学費用を返せって言葉も聞こえたけど?」
叔母が大声で怒鳴っていたとはいえ、なにもかもすべて聞かれていたようで途端に情けなさが込み上げてくる。
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