エピローグ 『次』へ

第40話

それから10数年後。

「…おじいちゃんめ…」

すっかり復興した水神神社の前を、恨めしそうに1人の少女が走っていた。

長い黒髪に、修行の服を着た少女はぜえぜえ、と息を切らしていた。

「た、ただいま…」

自宅前に着いた少女は自宅ではなく、同じ敷地内にある道場へ向かう。

「おう、おかえり」

そこには修行服に身を包んだ、龍海が少女の帰りを待っていた。

「『おかえり』じゃないよ! どんだけ走らせるの!」

「どんだけ、って、1キロだろ? お前のお母さんはこれの倍は走っていたぞ」

「はあ!?」

「…ぶつぶつ言っているならもう少し走ってくるか?」

「そ、それはイヤだ!」

「なら、さっさとク-ルダウンしなさい」

「は-い…」

少女は少し拗ねながら、ランニングで温まった体をストレッチし始めた。

と、そこへ。

「こんにちはー」

「こんにちは」

少女と龍海はその声に振り返り入口を見た。

「おう、いらっしゃい。柊くん、鈴ちゃん」

そこには正装に身を包んだ北斗と着物を着た鈴がいた。

「柊さん!鈴さん!」

2人の姿を見た少女の顔がパァーっと、明るくなった。

「こんにちは、椿ちゃん」

「こんにちは!」

「ちょっと見ないうちにまた大きくなったね」

そう言って鈴は愛おしそうに椿の頭を撫でた。

「北斗くん、柊家の方の用事は終わったのか?」

「はい、当主としてしっかり役目を果たしてきましたよ。あとは前当主、父を説得させるだけですね」

「そうかそうか」

「私も、神社関係の集まりを終えてきました。疲れた-」

「おう、お疲れ様だったな」

「椿ちゃんは、お父さんに似てるな」

「確かにそうね。良かったね、椿ちゃん。お父さんに似た女の子は幸せになれるのよ」

「う、うん…?」

椿は、よく分からない2人の会話に首を傾げながら返事をした。

「で、そのお父さんとお母さんはどこへ?」

「ああ、ザクラと星利くんは----」

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