第39話

ザクラは無言で目を見開いている。

「お前と旅をしてきて。いつからかお前がいなくなるのが怖くなった。 もし死んでしまったら、もし消えてしまったら、と思うと居ても立ってもいられない。お前が守ってきた世界を、今度は俺がお前ごと守りたい」

星利は、少し熱を帯びた目でザクラを見つめる。

じっと見つめられたザクラは目を震わせる。

「星利・・・」

そう呟いた声は震えている。

「・・・ありがとう」

「え?」

それを聞いた星利の表情が固まる。

「私をずっと守ってくれて、助けてくれて。おかげで世界を救うことができたし、私自身もけじめをつけられた」

そう言うザクラは微笑む。 だが、星利はその微笑みはどう意味なのか分からず、ますます表情が固くなる。

「私はこれから、『春風ザクラ』1人の人間として生きていく。それで、できることなら・・・」

ザクラはそこで下を向く。

「春風?」

ザクラの少し伸びた黒髪から、赤くなった耳が覗く。

「・・・私の・・・側にいて下さい」

絞り出すようにザクラが言葉を発した。

「・・・え」

その言葉に星利は、先程とは違う意味で固まる。

「私も・・・星利のことが好きです」

ザクラは観念したように、ガバッと顔を上げる。

その顔は真っ赤で、星利は息を飲む。

「ほ、本当か、春風」

「2度も言わせないでよ・・・」

顔をさらに真っ赤にしたザクラを、たまらず星利が勢いよく抱きしめた。

「わ!?」

「ごめん、つい嬉しくて。前もこうやって抱きしめたことがあったけど、こういう意味で抱きしめることができて、俺はすげー嬉しい」

「星利…」

星利はザクラから体を離し、ザクラの顔を見る。

その瞳は優しく、見つめられたザクラはさらに顔を赤らめた。

「…星利、実はまだ話には続きがある。聞いてくれる?」

「おう?」

「星利、私ずっと考えていたんだけど・・・」

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