第5話 アセビの花
第37話
「はー、本当にどうなることかと思ったわ」
国王との謁見を終えたザクラと星利は王宮を後にし、春風邸へと帰る道を進む。
「それはこっちの台詞だ。陛下の話を断るだなんて」
大きく伸びをしたザクラを前にして、星利はため息混じりに言う。
「あ、そういえば」
星利の少し前を歩いていたザクラが足を止める。
「あ?」
ザクラがくるりと星利の方を振り返る。
「陛下が話題を切り出した時さ、星利全然驚かなかったよね? もしかしてお父さんから聞かされた?」
「あー・・・」
星利はめんどくさそうに頭を掻く。
「・・・実はさ、俺が龍海さんに訊いたんだよ。王宮から帰ってきた時、春風が様子がおかしかったから。そしたらそこで、お前が陛下から『国付きの武術指導者にならないか』っていわれているって知ったんだ」
「あー・・・なるほどね」
「あ、言っておくけど! 俺が勝手に聞いたんだからな。龍海さんはなんも悪くないから!」
「いやいや、別にお父さんを責めてるわけじゃないし。もちろん星利にもだけど。まあ、どんな結論を出したって、いずれはみんなに話さなきゃいけないな、って思ってたし」
「なんだよ、それ・・・」
悶々としていた時間はなんだったんだよ、と星利はため息をつく。
「ごめんごめん」
ザクラはそう言って苦笑する。そして、再び前を歩いて歩き出す。
「んだよ、もー・・・」
「・・・心配してくれてありがとうね」
「え」
前を向いたままザクラが呟いた言葉に星利は固まる。
「珍しいな、お前がお礼だなんて・・・」
星利は戸惑いを隠せないまま、ザクラに駆け寄る。
「わ、私だってお礼ぐらい言うわ!」
そう吠えるように言いながら振り向いたザクラの顔は赤くなっていた。
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