第36話

「なるほど、恩返しか・・・」

「と、申し上げましても、まだ具体的にははっきりと決まっておりません。 ですが、再び旅をしながら世界の人々にお礼を言いたいと思っております」

「そうか」

「・・・せっかくのお話しでしたのに、誠に申し訳ありません! 陛下!」

ザクラはそう言うと、深々と頭を下げた。

「そうか・・・」

そう言った国王はそれから何かを考えるように黙ってしまった。

そんな時間が数分流れ、ザクラたちは冷や汗をかきはじめた。

国の頂点に立つ国王の申し出を断ったのだ、最悪、殺されるかもしれない。

そう考えながらザクラは心の中で、斬られる覚悟まで決めていた。

「・・・顔をあげなさい。海救主殿」

ようやく国王が口を開けた。ザクラは恐る恐る顔を上げる。

「海救主、春風ザクラ。 そなたに、緑葉国国王として命令を下す」

厳かに言った国王の言葉に、ザクラたちに緊張が走る。

「・・・できるだけ末永く、幸せに生きられよ」

「え・・・?」

どんな命令が下されるのか、と緊張していた2人はその命令に驚く。

「海救主として戦い、その力がなくなっても、『世界の人々に礼がしたい』というその気持ち。よく伝わった」

そう言って国王は穏やかな優しい表情を浮かべる。

「その平和の礎には多くの犠牲者がいる。その者たちのためにも、末永く幸せに生きられよ。これはおそらく、その犠牲者たちの願いでもあるとわしは思う」

国王は玉座から降りザクラたちの手を握る。

「陛下!?」

「よくぞ生きて帰ってきた。

よくぞ世界を守ってくれた。ーーーありがとう」

そう言った国王の瞳は潤んでいた。

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