第34話

それから2日後。ザクラは龍海を通じて再び国王と謁見することになった。

「1人で大丈夫か?」

玄関で靴を履くザクラに龍海が心配そうに言う。

「大丈夫、何回か行ったあるし」

正装姿のザクラはそう言って振り返って笑う。

「何回か行ったあるし、って言ったって、1人で行ったことないだろ」

「たしかにそうだけど・・・。 大丈夫だって」

「すまんな、用事がなければついて行ってやれたのに」

「仕方ないよ。そっちが先約だったし」

ザクラはそう言って、玄関のドアノブを握る。

「じゃ。行ってきます」

「くれぐれも陛下に失礼のないようにな」

「はーい」


「さてと・・・参りますか」

パタン、と家のドアが閉まった音を背後に感じながらザクラはそうつぶやく。

「うん、大丈夫、大丈夫」

まるで自分を励ますようにつぶやくと、ザクラは歩き始める。

と、そこに。

「あれ? 星利?」

ザクラは、鈴の実家・水神神社の鳥居の前に星利がいることに気づいた。

「どうしたの、こんなところで?」

ザクラは首を傾げながら星利に近づく。

「・・・よお、春風」

ザクラの姿に気づいた星利は、組んでいた腕を解いた。

「『よお』って、今朝も会ったじゃん。私の家で」

「まあ、そりゃそうだよな」

星利はそう言って苦笑する。

「で、どうしたの? そんな格好で、こんなところで」

ザクラは自分と同じく正装に身を包んだ星利をみる。

「・・・あー、実はさ」

そう言って、星利は気まずそうに顔を掻く。

「龍海さんに頼まれたんだよ。『ザクラと王宮に行ってくれ』って」

「え?!」

ザクラはそれを聞いて、呆れたようにため息をついた。

「もう! 私『大丈夫だ』って言ったのに」

「まあ、心配なんだろうな。お前は、龍海さんのたったひとりの娘だし、これから行く先は王宮だし」

「そうだけどさ・・・」

「ま、とりあえず先を急ごうぜ? 謁見する時間は決まっているんだろ?」

「うん」

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