第30話
「ただいまー」
「あ、帰ってきた」
星利が帰ってきてから数時間後。日が暮れかけた頃、正装姿の春風親子が帰ってきた。
「おかえりなさい」
帰ってきた春風親子の顔には疲労の色が見える。
「突然留守を任せて申し訳なかったね」
「いえいえ。気になさらないで下さい」
星香はそう言ってにこりと微笑む。
そして、昼間に仕込んだ鍋を食卓に置いた。
「そういえば、お食事は済まされましたか?」
「いや、まだ」
「実は、もしかしたら、と思って、勝手に台所を使わせていただきました。すいません」
「いやいや、むしろありがとう」
そんな星香と龍海のやりとりを耳にしながらも、星利はザクラの様子が気になっていた。
「・・・春風?」
疲労の顔をしたザクラを見つめ、星利は名前を呼ぶ。だが、ザクラは反応しない。
ザクラは疲労となにかを考えているようなボーッとした表情をしていた。
ーーーまた、あの時の顔をしてやがる。
星利はザクラのそんな表情に見覚えがあった。
「おい、春風」
星利は再びザクラに声をかけた。すると。
「・・・あ、ごめん。 星利帰ってきてたんだ」
ザクラはようやく反応を返した。
「あ、ああ・・・」
ーーーこいつ、俺がいたこと気がつかなかったのかよ?
「わあ! 星香さんのご飯美味しそう!」
星利がそう思っているのを知らず、ザクラは食卓についた。
「ほら、星利も食べようよ」
「・・・ああ」
わざとらしいザクラの言葉に、星利はそう返したのだった。
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