第27話

「お久しぶりですね、海救主様」

「・・・そうだね、白羅」

数人の護衛と共に客間に通された白羅は、ザクラの顔を見て嬉しそうに微笑んだ。

「白羅の方は変わりないみたいだね。良かった」

「いえ・・・。海救主様もご無事でよかったです。お身体の具合はいかがですか?」

「うん、大丈夫だよ」

「良かったです」

白羅はそう言って、ホッとため息を漏らした。

「白羅、久しぶりだな」

お茶を乗せたお盆を手にした星利が客間に入る。

「星利様! お久しぶりです」

ザクラの時と同様、星利の顔を見て嬉しそうに白羅は微笑んだ。

「相変わらず元気そうだな」

「はい。星利様もお変わりないみたいで」

「まあな」

白羅と護衛たちにお茶を差し出した星利は、ザクラの横に腰を下ろした。

「それにしても、望月島からよくここまで来たね」

「偶然、緑葉国の近隣の国に用事があったので。

それに、風の噂では耳にいたしましたけれども、海救主様があれからどうなさっているのかと思いまして」

「そうか。それはありがとうね」

「いえいえ、そんな・・・」

白羅はそう言いながら、星利の差し出したお茶に手を伸ばした。

「いただきます」

「はい、どうぞ」

白羅は一口お茶を飲むと、ほう、と息を漏らした。

「白羅はこれから望月島に帰るの?」

「はい。4日後ぐらいに島に着く予定でいます」

「4日か。私たちはあの時流されて望月島に漂着したから分からなかったけれど、

結構時間かかるんだね」

「はい」

と、その時。

話を聞いていた星利がパッと腕時計を見た。

「星利?」

すると、星利はぐいっとザクラの耳に顔を寄せた。

急に顔が近づき、ザクラは驚く。

「春風、腕時計」

「あ」

こそっと耳打ちされ、ザクラは腕時計のことを思い出した。

「え、どうする?」

ザクラは慌ててポケットから、腕時計の受け取り用紙を取り出した。すると、ひょいっと星利がそれを奪った。

「え?」

「俺が代わりに取ってくるよ。白羅と積もる話だってあるだろ」

「え!?」

「金はとりあえず立て替える。で、あとでお前に請求するから」

「本人じゃないけど、大丈夫?」

「昨日俺もついてきてたし大丈夫だろ。それに、この引き渡しの紙もあるし」

「・・・わかった。じゃあお願いするわ」

「おう」

「あ、あの・・・」

そのやりとりを見ていた白羅が気まずそうに言った。

「何かございましたか? それでしたら私たち・・・」

「いやいや、大丈夫」

腰を上げかけた白羅をザクラは慌てて止める。

「いや、でも・・・」

「なんでもないから。それにもうちょっと白羅と話したいんだ。いいかな?」

「はい」

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