第24話

あれから2人は無言のまま、町の繁華街から少し外れた場所に向かった。

時折、星利はちらちらとザクラの顔を見て、まだ傷跡の残る町にザクラを連れ出したことを後悔していた。

そうしている間に、とある時計屋にたどり着いた。

「いらっしゃいませ」

店内に入ると、歴史が長い由緒ある名店らしく少し埃っぽい匂いと、重厚な雰囲気を漂っていた。

「あの・・・、腕時計を直していただきたいのですが」

星利が店員にそう話しかける。その傍らで、ザクラは腕時計を外しはじめた。

「はい。 いかがなさいましたか?」

店内の重厚な雰囲気とは異なり、店員は親しげにそう応えた。

「この腕時計を直していただきたいんです。動かなくなってしまって・・・」

「かしこまりました。 少し状態を確認させていただきますので、お預かりしてもよろしいでしょうか?」

「はい」

店員はそれを聞いて、トレーをザクラに差し出した。

「こちらにお願いします」

ザクラは店員に従い、腕時計をトレーに置いた。

「少々お待ちください」

店員は腕時計の入ったトレーを持って、店の奥へと姿を消した。

そして、数分後に再び現れた。

「お待たせいたしました。 確認いたしましたところ、

部品の軽い損傷程度なので、その部品の交換をいたします。部品の交換をされますと、再び使用することができますよ」

「本当ですか!?」

「はい」

店員はザクラの嬉しそうな顔をみて、にこりと微笑む。

「翌日でしたら修理が終わっておりますので、それまでお預かりしていますね」

店員はそう言って、サラサラと紙にペンを走らせた。

そして、書き終えた紙をザクラに手渡した。

「こちらが修理終了時刻となります。

お忘れのないよう、お願いいたします」

「はい、よろしくお願いします」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る