第3話 止まった時計

第23話

こうして2人は町へ出ることになった。

ウィーン・ウォンドとの戦いの後、島江医師の病院のみしか行っていないザクラにとっては、町に出ることは久しぶりのことだった。

「町・・・こんなことになっていたんだね」

旅に出る前までの町の姿しか知らないザクラは、すっかり変わってしまった町の姿を見てそう言った。

「これでもまだなんとか復興が進んだ方だよ」

星利はザクラを守るように隣を歩く。

「・・・そうなんだ・・・」

『元・海救主、春風ザクラ』だと分からないように、と被ったパーカーのフードの下でザクラがうつむく。

「やっぱり、ウィーン・ウォンドとの戦いで・・・なんだよね?」

「・・・ああ」

ザクラはそれを聞いて、胸元にあるガラスの筒のペンダントを握りしめた。

「・・・春風」

その仕草を見ていた星利がザクラを呼んだ。

「こうなったのはお前のせいじゃない。 ウィーン・ウォンドが勝手にやったことだ。だから、お前が気にすることじゃない」

「そうだけど・・・。 でも、私も少なからず関わっている」

「春風」

「私がもっと早くウィーン・ウォンドを倒していたら、と思ってしまうんだよ」

ザクラはそう言って目を伏せた。

「春風・・・」

星利は、そんなザクラにかける言葉を見つけられなかった。

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