第18話

「なっ・・・⁉︎」

まさかこの流れでくるとは。

突然の話にオレは慌てる。

「そういえばどうなったの?」

姉貴たちがぐいぐい問い詰めてくる。

顔が熱い。

自分でも今、赤面してるんだろうな、と分かる。

「手紙、渡したんでしょ?」

それを聞いてオレはため息をついた。

「え、ため息?」

「ダメ・・・だったの?」

「いや、そうじゃない。実は・・・」

オレはあいつに手紙を渡したものの、

未だに返事をもらっていないことを話した。

「は? まだ返事をもらっていない!?」

「まったく、何やってんのよ、あの子は」

水神はそう言ってため息をつく。

「いやいや、あいつが悪いわけじゃない。たまたまタイミングがなかったんだよ、きっと」

「だとしてもーーー」

「あいつ、ウィーン・ウォンドとの戦いの直前にオレに返事をしようとしていたんだよ。

でもその時、ウィーン・ウォンドが起こした嵐がやってきて・・・。

それにウィーン・ウォンドと対決する直前、『私も言いかけたことがあったからね。戻ってきたら言うから』って言っていたし」

「そうだったのね。ごめん」

水神はそう言って頭を下げた。

「でも、本当に大丈夫? あの子そんなことあったなんて忘れてない?」

「あー・・・」

まるで魂が抜けたようにボーッとして、悲しそうな顔をするあいつ。

かつて、世界を救うため海救主として戦い、ウィーン・ウォンドと対峙した、あの春風ザクラの呆れるくらいの元気の良さはなくなっていた。

「あの戦いがあった後だからな。ひとつふたつ記憶がなくなっていても・・・」

「マジか・・・」

「どうする、星利? もう1回告白する?」

「うーん・・・」

オレはそう唸って頭をガシガシと掻く。

「確かにそうした方がいいかもしれねぇ。でも・・・」

「『でも』?」

「今のあいつに言えねぇよ。こんなこと」

仲間たちはオレの言葉を黙って聞いてくれている。

「何をどう思って、何を考えてああなっているのかなんて分からない。

できることなら話してほしいし、話を聞いて、あいつを楽にしてやりたい。

でも今、あいつに告白したらそれができなくなるかもしれねえ」

かつて、オレは幼少期に銀の人魚に助けられた。それ以降その銀の人魚をずっと探していた。

そして、ひょんなことがきっかけで、銀の人魚の正体があいつだと分かった。

助けてくれた銀の人魚があいつだったこと、愛している人ともうすでに出会っていたことを知り、嬉しかったのだが。まあ、それが分かった当時は、あいつとオレはかなりギクシャクしていた。

「色恋沙汰に疎い春風のことだ。告白したらたぶんギクシャクする。だから、今告白してあいつを困らさせたくない」

「星利・・・」

仲間たちは何か言いたそうだったが、オレの気持ちは変わらない。

「あいつへの気持ちは変わらない。むしろ強くなった気がする。

だからこそ、あいつが落ち着くまで待ってあげたい」

「・・・分かった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る