第15話

残ったザクラは海を見つめていた。

「・・・そんなに信用性なかった?私の言葉」

ザクラはくるりと後ろを振り返る。

「信用性とかの問題じゃないけどな」

そこには、見守るように星利が立っていた。

「こちらとしては心配なんだよ。

お前がいくら『大丈夫』だと言ってもさ」

「でも、本当に大丈夫ーーー」

「そう言って、今まで何回無茶したと思ってんだ」

「うっ・・・」

図星を突かれたザクラは遠い目をする。

「遠い目をすんじゃねえ! 言葉通り死闘を繰り広げて、その結果1回死んで。悲しみに打ちひしがれる間もなく生き返って。結果的にウィーン・ウォンドを倒せたからいいものを。

『ウィーン・ウォンドを倒せた』と思ったら、ばたりと倒れるし」

星利はため息をつく。

「・・・ほんと、あの時オレらめっちゃ焦ったんだからな? また死んでしまったんじゃないのかって!!」

「ごめん」

「よく分からないままお前を背負って街に出てみれば、ウィーン・ウォンドが起こした天変地異の影響で大変なことになってるし。オレらの姿を見るなり、街の人々はお前を拝みまくるし」

「そんなことが・・・」

「『そんなことが』ってお前・・・。

とりあえず水神の案内で、お前の実家に行った。で、近くに住んでいるという、術とか力関係に詳しい医師に診てもらうことになった」

「お父さん、びっくりしたでしょ?」

「いや、そうでもなかった。で、診てもらった結果、ただ眠っているだけだと分かった」

星利はザクラの横に歩いていく。

「本当にどうなるかと心配してたんだからな、みんな。あと・・・オレも」

星利はそう言って顔を少し赤く染める。

「ま、まぁ。1ヶ月も起きなかったわりにはピンピンしていてよかったけど」

星利は顔を赤くしたまま、ぷいっと顔を背ける。

「星利」

「ん?」

ザクラの呼び声に星利は再びザクラの方を見る。

「心配してくれてありがとう。おかげでウィーン・ウォンドを倒せた、世界を救えた」

ザクラはそう言って頭を下げた。

「あいつを倒せたのはオレらだけのおかげじゃない。

お前を信じてくれた人々のおかげでもある」

「それは十分分かってるよ」

「オレに言った、心配してくれたことへの礼と、『おかげでウィーン・ウォンドを倒せた』っていう言葉、あいつらにも言ってやれよ?」

「うん、もちろん」

「・・・で、お前はこれからどうするんだ?」

「どうしようかね・・・。海救主の力を使い尽くして、もはや「海救主」じゃないしなぁ」

ザクラはそう言って、首から下げたガラスの筒のペンダントを手にとる。

それを見つめるザクラの顔には、少し寂しげな表情が浮かんでいた。

「・・・さ、そろそろ戻ろうか。みんなが待ってる」

そう言ってザクラはその表情をサッと消した。

「・・・おう・・・」

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