第12話

「いや、こうなったら、すべて知ったうえで仕事を引き受けてもらおう。でなければ、他に手立てがない」


 宮園が止めるのも聞かず、慧は話を続けた。


「悪い噂はとにかく燃え広がりやすい。式場の予約はどんどんキャンセルされ、親会社の株価にまで影響が出はじめた。今は静かにして時が過ぎるのを待てという者もいるが、俺はその考えには反対だ。黙っていたら弱いと見なされる。逃げ出したら負け犬呼ばわりされる。成功を手にする者は、諦めなかった者だけだ」


 そう言い切る慧は、たくましくも思えたが。

 私にまったく関係のない話をされても――晶は、ただ苦笑するしかない。


「お気持ちは分かりますが、ここで意見すれば、火に油かと」


 晶は、一般的な意見のつもりでそう言った。

 経営者として打開策を必死で模索しようとする努力は、痛いほど分かるけれど。


「だからって、俺は諦めたくない。そして、君にも力を貸してほしい」


 慧が作業台を回り込んで、晶のそばまでやってきた。

 彼の真剣な眼差しに、晶は息を呑む。


「そこで、だ。起死回生を狙ったブライダルフェアで、目玉となるウェディングケーキを作ってほしい。一月から十二月まで、誕生花でデコレーションされたケーキをずらりと並べたいんだ」

「す、すごい……」

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