第13話
誕生花のウェディングケーキというアイデアに、素直に晶はときめいた。十二台のケーキが並ぶ壮観な光景を思い浮かべ、思わず手を握りしめる。
「それを私に? どうして?」
ありがたい依頼ではあるが、どうして自分に白羽の矢が立ったのか気になる。
「実は、本命のパティシエが忙しくてつかまらないんだ。この近くにキッチンスタジオを構えている、清水サリというパティシエを知っているか?」
「え、ええ、もちろん。元モデルで、ケーキ教室の予約も三年待ちの、清水サリさんですよね」
フラワーケーキを作るパティシエで、清水サリの名を知らない者はいないだろう。モデルを辞めたあと単身渡米し、ケーキデコレーターとして経験を積んだ彼女は、帰国後独学でフラワーケーキ作りをはじめた。
やがて、彼女の華やかなフラワーケーキがSNSでバズり、あっという間に人気パティシエとなる。元モデルであることやニューヨークでの下積み経験という話題性もあり、メディアによく取り上げられるため、日に日に知名度を上げているところだ。
「彼女を何度訊ねても、会ってすらもらえないんだ。そろそろ企画を会議にかけなければならないし、時間がない。そこで何気なく、マップアプリで近くのケーキ店を検索したら、ここが出てきた」
「マップ登録していて良かった……いや、待って。ということは、私じゃなくてもいいってことなんですよね。私のケーキ、食べたことないんですよね」
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