第11話

「私は秘書の宮園と申します。その件については、社長には何も聞かないでください」


 宮園は、首を小刻みに振った。


「聞かなくても、ここに全部書いてありますから、大丈夫です」


 晶は、何も聞きません、といった風に何度も頷いた。


〝結婚式場経営者の「一生結婚するつもりはありません」という発言に対し、結婚する人たちを馬鹿にしていると一部のSNSユーザーが反発。自分は結婚しないのに他人を結婚させて金を稼ぐのは不謹慎だ、生まれながらの勝ち組の余裕を見せられて不愉快などの意見が見られた。式場にもクレームが多く寄せられ、営業に支障を来しているようだ〟


 たった一言が、これほど燃え上がるとは。


 晶は、SNSの地獄を見た気分になる。


 結婚するしないは個人的なことだ。他人がとやかく言う必要はないはず。

 しかしどうして、わざわざインタビューで個人的なことを公にしたのだろう。


 結婚式場の社長なのだから、なおさら言わないでおけば良かったのに。

 晶は、首を傾げてしまう。


「そのインタビューを受けたのは、アメリカにいた時だよ。当時は、子会社の社長になるなんて考えてもいなかった」

「わ、私は、何も聞いてません」


 勝手に語りだす慧に、晶は困惑した。


「わざわざ日本から記者が訊ねてきてくれたので、リップサービスしたらこうなったというわけだ」

「社長、それ以上は。もう帰りましょう」

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