第6話
そもそも、どんなに辛くとも、仕事は辞められない。
結婚しようと、子供を産もうと、女だって一生働かねばならない時代だ。
そんなとき、結婚し子育て中の友人が作ったフラワーケーキに出会ってしまった。自宅のキッチンで、現場から離れた主婦が、店に並ぶケーキと見紛うような美しいケーキを作っている。晶にとって、衝撃的な出来事だった。
ショーケースに並ぶことのない、世界にたったひとつのケーキが眩しい。
晶は、自分がなりたかったものは、ケーキデザイナーだったと、思い出す。
「
オリジナルケーキをデザインしたい。
どこにもないたったひとつのケーキを作りたい。
一度きりの人生を、夢に向かって生きてみたい。
二十七歳にして独立開業の道を選んだのは、再び情熱に火がついたからだ。また、恋人もおらず社畜気味で、生活費以外の出費がほとんどなかったため、それなりに貯蓄があったというのもある。
「てかさ、売れなかったら意味ないじゃん」
スマホの向こうで、友人の
「ま、まあね」
開業して二ヶ月になるが、知り合いが義理でちらほら注文してくれただけで、新規のお客様からの注文はまったくなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます