焔の御子

第14話

それからしばらくして、正式に父は俺に柊家の当主の座を渡した。

 柊家を表す「炎」を意味する、代々当主に伝わる真紅の着物を身につけ、俺は父から柊家当主の証である品々を受け継ぎ、柊家当主となった。


 ザクラちゃんたちのいる町に戻ったのは、柊家当主になってだいぶ経ってからのことだった。

「ザクラちゃん、あれから元気になって良かったよ」

 白い花嫁衣装を身につけたザクラちゃんが微笑む。

 柊家に戻った時は、ザクラちゃんは戦いの影響でまだ布団から起き上がれずにいたが、あれから回復し以前のように元気になった。

「手紙では元気そうだな、と思っていたけど、私も久しぶりに北斗の顔を見られてよかったよ」

 柊家の当主となってからの日々はとても忙しかった。当主になったことをあちこちに報告に行くのはもちろん、標が荒らした里を元の姿に戻すためにあちこちを駆け回った。里のために新しい試みをするたびに伝統やしきたりを重んじる身内に批判されたりした。

 ちなみに、つづみは里が復興するのと伴ってだんだんと体調が良くなった。今では以前のように柊家に仕えよく働いてくれている。それと、つづみにはあの時守り神から聞いた話をまだしていない。守り神にもどうしたらいいか、とあれから訊ねてみたが、「お主が頑張って里を復興しつつあるので、しばらくはわしがまたこの土地神の代理をつとめる。だからあの娘にはまだ話さなくてよい」と言われた。

 そんな慌ただしい毎日を縫って、ザクラちゃんや町にいる仲間たちとは手紙でやりとりをしていた。その中で、戦いを終えた後から付き合い始めたザクラちゃんと星利が結婚することになったのだと知った。それを知って、仲間達の結婚式だなんとかして行きたい、とかなり無理をして町に戻ってきた。

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