第13話
「…そういうことがあったのか」
「はい」
あの後俺は山を降り、守り神と別れた。守り神は「つづみをよろしく頼む」と言っていた。屋敷に戻った俺は、帰りを待っていた当主である父に帰ってきたこと、赤石山でおきたあこと、そして標に何が起きたのかも話した。
「標を、兄を止めることができませんでした。申し訳ございません」
標への気持ちが父にあったことを知ってから、父にそう頭を下げた。
「…報告と参拝ご苦労。今夜はゆっくり休め」
標の最後を聞いたのにも関わらず、父は話を聞く前と変わらなかった。
「はい。失礼します」
そう言って俺は父の部屋から出て行く。
だが、部屋の扉を閉めた時。
「標…」
小さな震えている声で父が標の名を呼んでいるのが聞こえ、俺はそっとそこを後にした。
「よお」
自分の部屋に戻ると、山の麓で待っていたレオが再び俺が戻るのを待っていた。
「ああ」
俺はそう返しながら布団に体を投げ出した。
「疲れた…」
「…だよな」
父に話したことは、すでにレオにも話してある。だからか、あまりレオは詮索しない。
「今朝起きるのが早かったからもう寝るか」
ぐわっとレオが大欠伸をした。
「ああ…」
そう言いながらゆっくりと俺のまぶたが重くなっていく。
「…おやすみ、北斗」
薄れていく意識の片隅でレオが優しい声でそう呟いたのが聞こえた。
その夜、兄弟みんなで仲良く遊ぶ夢を見た。姉・澪、兄・標、弟・夏彦、妹・日向、そして俺が、色とりどりに色づいた中庭で追いかけっこをしていた。兄弟で争うことがあるこんな現実があることを知らなくてとても楽しそうだった。なにかが違えば、こんな素敵な世界もあったかもしれない。そう思わせる、切ない夢だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます