第90話

「そうやって直ぐに暴力を振ろうとするんだから!」



「お前がうぜぇ勘違いばっかしてっからだろ。いい加減、自分の魅力の無さを自覚しろよ」



「………っ」




喉の奥がグッと詰まる。




意地悪な発言も、力で捩じ伏せられるのも、いつものことなのに何故か今日は無性に辛い。




“一生口をきかない”って言っておきながら、ちゃっかり喋っているのも……やだ。




今日の私、やっぱりおセンチなのかも。




「喧嘩しないの。ね?」




ママが優しく微笑んで私たちを諭してくる。




だけど……いつもならそこで和む空気も依然変わらずに、ズシッと重たかった疲労感が余計に増す。




堪えきれなくなった私は、ショウとナオに背中を向けて階段を掛け上った。

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