第89話

普段ならここで怒るけど、この場は恥じらった方が早く解放してくれるはず。




「やだ。あんまりジロジロ見ないでよ。恥ずかしいっ」




二の腕を両手で擦りながら、私は最大限に恥ずかしそうな表情を作って、ケラケラと笑い続ける2人にチラっと視線を向けた。




“何だかんだ言って、男の子は恥ずかしがる女の子がお好き”




乙女マジック、パート3。



ふふ。久々っ。





「はっ。キモ。お前の体になんか1ミリも興味ねぇんだよ」



「自意識過剰もいいとこ」




なのに……赤面するはずだった2人は、笑うのを止めて私に冷めた眼差しを向けてくる。




それも無表情で。




「最低っ!私だって色気くらいあるのに!」



「ないない。全裸で迫られても笑っちゃうレベル」



「だな」



「なにそれ!だいたい、どうしてショウが家に居るの?私、一生口きかないって言ったじゃないっ」



「うぜぇ。しばくぞ」




酷いのは2人の方なのに、ショウの低い声が私を制圧する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る