第74話

「じゃあ、何?」



「俺の口からは言えない」



「はい?ここまで言っておいて?やだ。言ってよ。気になるじゃないっ!」



「言えないって」



「やだやだ!意味深なことを言ったナオが悪いんだからねっ。責任を取って言ってよっ」



「……しつこい」




ナオはボソッと嫌そうに呟くと、ソファの縁にトンッと私の体を押さえつけてきた。



徐々に顔の距離が近づいていく。




「……あれ?」




ナオの黒い前髪がサラサラとおデコを掠める。



黒い瞳がボヤけて見えるくらい顔が近い。



体を少し動かせば唇が触れ合っちゃうその距離で、ナオは再び口を開いた。




「……カンナ」



「……はい」



「何でも漫画みたいに上手くいくと思ってたら大間違いだよ。わかった?」



「う、うん……」




ぎこちなく頷いたらナオは満足そうに笑って私から離れた。




なんだ……。キスされるのかと思っちゃったよ。

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