第73話

「……ナオ?どうしたの?」




体温が急上昇する。



夏の暑さよりも更に熱い。



力いっぱい抱き締められたのは初めてかも……。



こんなにナオと密着するのだって、眠たいときの“デレ”状態のときだけだもん。



それに今のこの状況は、完全にナオの意思なんだと思うとドキドキしちゃう。




でも、それ以上に不安そうに顔を歪めるナオに意識が集中する。




「アヤトだけは好きになるな」




今にも消え入りそうな声。



悲しそうに目を細めたナオは傷ついているように見えた。





「……どうして?」



「カンナが傷つくだけだから」





いや、傷ついてるんじゃない。



心配してるんだ……。




感情を持っていたら稀に起こり得る現象。



そっか。ナオったら……。




「アヤトが好きだったの?ごめんね。私、全然気づかなかった。いつから目眩くBLの世界に……」



「いや、1000%違うから」



「え?じゃあ、私が好きなの!?」



「それも違う」

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