第66話

予鈴が鳴り響いて、遅刻ギリギリで登校してきた数名の生徒が校舎に向かって走っていく。



窓枠に頬杖をついて私を見下ろしていたナオは、窓から少し身を乗り出すと鼻で小さく笑った。




「帰るの?」



「うん。帰るつもりだよ?」



「ふーん。俺、カンナに渡す物があるんだよね。そこで待っててくれない?」



「渡す物?」




首を傾げて聞き返したものの、ナオは私に返事をすることなく、そのまま顔を引っ込めてしまった。




渡す物って何だろう?



何か貸してたかな~?



先生や他の生徒に見つからないように自転車置き場の中に身を潜める。



制服は少し乾いてきたけど、まだ冷たい。




あの先輩、絶対にわざとだったよね?



私、何かしたっけ……?





「隠れてるつもり?甘いね。校舎から丸見え」



「わっ!ナオ?早くない?」

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