第65話

「あの、」



「本当にごめんなさいね?今日はもう帰った方がいいんじゃない?」




口元をゆったりと上げて微笑む先輩。



明らかに悪意のある笑顔。



先輩ってこんなに性格が悪かったっけ…?





「絶対にわざとだ……」



「……は?」



「いえ、何でもないです。さようなら~!」




私は唇をキュッと噛み締めて先輩に背中を向けた。




どっちみち、このまま教室に行くわけにもいかないし、帰るしかないよね。





「やだー。見て、あれ」



「あははっ。ウケる!」




上級生のお姉様がすれ違う度に私を見てクスクスと笑う。



水を含んだスカートとシャツが肌にベッタリとくっついて気持ち悪い。





「なーんだ。水で濡れたわりに全然透けてないね。残念」



「え……?」




声が聞こえてキョロキョロと辺りを見渡して見れば、窓からナオが顔を覗かせていた。

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